第四十八回 本花展

    平成三十年十一月九~十一日

  出展数 一四二鉢

総合優勝 翡 翠 阿 波   植田 良夫
加西フラワーセンター賞 仁 王  日 向  宮崎  満
相生園芸賞    豊 雪   土 佐  渋谷  博
白花優勝   大 雄   薩 摩  宮崎  満
白花金賞   泰 白   肥 前  植田 良夫
白花銀賞   白 妙   土 佐  岩本 孝之
白花銅賞   大 雄   薩 摩  平井  裕
紅花優勝   室戸錦   土 佐  渋谷  博
紅花金賞   恵     土 佐  植田 良夫
紅花銀賞   明正紅   日 向  岩本 孝之
紅花銅賞   赤 龍   阿 波  圓尾  榮
桃花優勝   白梅(仮称)日 向  植田 良夫
桃花金賞   北薩ノ誉  薩 摩  岩本 孝之
桃花銀賞   日 光   土 佐  渋谷  博
桃花銅賞   北薩ノ誉  薩 摩  宮崎  満
黄花優勝   無 銘   土 佐  岩本 孝之
黄花金賞   三 光   土 佐  西村 和久
黄花銀賞   姫百合   土 佐  圓尾  榮
黄花銅賞   神 光   阿 波  宮崎  満
青々花優勝  清 水   土 佐  林  淳浩
青々花金賞  青 波   阿 波  宗行 正明
青々花銀賞  銀 風   阿 波  宮崎  満
青々花銅賞  銀 鈴   土 佐  平崎 清志
更紗花優勝  大弁慶   紀 州  植田 良夫
更紗花金賞  膨寿円   土 佐  平井  裕
更紗花銀賞  福ノ神   土 佐  渋谷  博
更紗花銅賞  龍 王   土 佐  岩本 孝之
青花優勝   古 都   土 佐  西村 和久
青花金賞   酔 湖   交 配  林  淳浩
青花銀賞   名ノ浦   土 佐  渋谷 明義
青花銅賞   都どり   土 佐  岩本 孝之
文人作優勝  翡 翠   阿 波  宮崎  満
文人作金賞  無 銘   土 佐  森江 潤二
文人作銀賞  無 銘   紀 州  岩本 孝之
文人作銅賞  北薩ノ誉  薩 摩  渋谷  博
チャボ花優勝 釈 尊   土 佐  平井  裕
チャボ花金賞 無 銘   不 詳  岩本 孝之
チャボ花銀賞 無 銘   土 佐  林  淳浩
チャボ花銅賞 紅 奴   土 佐  平崎 清志
柄物優勝   天 山   薩 摩  渋谷  博
柄者金賞   荒城の月  土 佐  岩本 孝之
柄物銀賞   春 光   球 磨  宮崎  満
柄物銅賞   日 向   日 向  宗行 正明
井上賞    無 銘   土 佐  宗行 正明
特別賞  (入賞数制限による)
チャボ部門  玉金剛   紀 州  植田 良夫

本花展 審査報告 --- 審査部---

本年度は出品数が百四十六鉢と昨年より三十三鉢多く集まり、盛会でした。
 総合優勝は薩摩産の貴峰です。九輪の大きな花が葉上高く伸び上がり、ベタ風の舌もよく、他を圧する迫力のある作品でした。また風神雷神の絵模様の鉢も品のあるものでした。新芽がなかったのが悔やまれますが、花がよいということで、特別に総合優勝となりました。   
 加西フラワーセンター長賞は阿波産の銀風です。八輪が花配りよく葉上高く伸び、上品さが感じられました。鉢元にコケをあしらっていました。
 相生園芸センター賞は薩摩産の北薩の誉です。桃色よく出て特徴をとらえた堂々たる手練れの作品でした。                        紀州蘭友の会賞は紀州の青花で紀の翠宝です。厚弁大舌の花が四輪開花、ふっくらした舌に大きな点が入り、見る者を魅了しました。
 白花優勝は薩摩産の白妙です。花茎一メートル近く十二輪を付けた、雄大というより巨大な作品でした。  紅花優勝は日向産の日向の誉です。紅色極めて濃く黒赤(?)に近いものでした。
 桃花優勝は土佐産の日光です。開花は四輪であとはは蕾でしたが、全体の姿が引き締まって、桃色が弁先までよく乗り、花弁の折鶴の特長が出ていました。
 黄花優勝は土佐産の金鵄です。七輪のうち五輪が開花し、花茎高く伸び、いかにも金鵄らしい好もしい作品で、鉢にも作者のこだわりが感じられました。
 青々花優勝は土佐産の銀鈴です。八輪咲きで、やや花間がつんだ印象を受けましたが、しっかりした株で、花弁の色や舌など、この花の良さがよく出ていました。
 更紗花優勝は肥前産の泰翔です。弁元がうすい赤、弁先がこれもうすい黄の花で、大きな舌が無点というすぐれものです。三輪が堂々と咲いていました。日本一と同系統の花です。
 青花優勝は土佐名の浦産の無銘です。葉上高くふわりと大きい花が十輪咲いていました。棒心を閉じた花弁が横に伸びて雄大で、名の浦産の特長がよく出ていました。
 文人作優勝は土佐産の素豊です。四輪開花し、一つは蕾でした。花軸が上方で曲がり、これに妙があり、手作りの鉢と調和していました。文人作の本家にふさわしい作品です。
 チャボ花優勝は土佐産の緑竜です。二輪が開花し、一つはまだ蕾でした。赤いベタ舌が美しい作品でした。
 柄物優勝は薩摩産の春光です。九輪のうち七輪が開花し、葉に汚れなくその柄が実にみごとでした。名人のお手並拝見といったところでしょう。
 交配種優勝は酔湖です。厚弁三角咲の花が七輪咲き、特に巻かない舌に見応えがありました。
 その他目を引いたのは白花金賞の大雄、井上賞の無銘、青々花銀賞の露風などでした。チャボ花の出品も多く、レベルの高いものばかりでした。
 関西寒蘭会は趣味者の会、アマチュアの会です(アマチュアとは元々好き者という意味)。展示会は自慢会であって、品評会ではありません。高価な花や奇抜な花、大きな花ばかりが壇上に目立つのは、好ましいことではないと思います。花作りはその人らしさ、花はその花らしさ。その特長を、自然な美しさを引き出すのが良いといえるでしょう。木村邦夫元会長や同じく山内敦人元会長の美学を、もう一度原点に返って見直すことが必要ではないでしょうか。

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第四十八回 早花展

    平成三十年十月二十八日
出展数 四九鉢
優勝 日向の誉  日 向   植田 良夫
白花金賞   素 光   土 佐   西村和久
白花銀賞   竜 雪   日 向   岩本孝之
白花銅賞   該当なし   
紅花金賞   御神錦   土 佐   岩本孝之
紅花銀賞   御神錦   土 佐   渋谷 博
紅花銅賞   無 銘   日 向   西村和久
桃花金賞   出展なし
黄花金賞   出展なし
 
青々花金賞  白 鳳   土 佐   圓尾 榮
青々花銀賞  出展なし   
更紗花金賞  福の神   土 佐   圓尾 榮
更紗花銀賞  無 銘   阿 波   宮崎 満
更紗花銅賞  無 銘   日 向   植田良夫
青花金賞   冠 青   阿 波   植田良夫
青花銀賞   延光寺の青 土 佐   西村和久
青花銅賞   王 道   土 佐   岩本孝之
 
文人作金賞  無 銘   土 佐   森江潤二
文人作銀賞  櫂 踊   紀 州   岩本孝之
文人作銅賞  該当なし
チャボ花金賞 竜 神   紀 州   植田良夫
チャボ花銀賞 無 銘   阿 波   宮崎 満
チャボ花銅賞 眞 秀   土 佐   渋谷 博
柄物花金賞  日 向   日 向   宮崎 満
柄物花銀賞  出展なし
交配種金賞  出展なし
優秀賞    無 銘   土 佐   渋谷明義
       三世冠   土 佐   後藤三男
       花 鳥   土 佐   宗行正明

本花展 審査報告 --- 審査部---

今年の出品数は五十四鉢でした。優勝は土佐産の室戸錦です。 八輪が開花し、紅色冴え、見応えのある作品でした。 紅花金賞の御神錦もそれに劣らず、色よく姿の整った作品でした。 白花金賞の素豊は五輪咲きで花軸がふわりと曲り、女性的な風情のある作品でした。こういう作りもあるのかと感心しました。 その他金賞の中では桃花の三世冠や青々花の銀風がよく花軸を伸ばして堂々とした作品、青花の豊水は青色が冴えて美しい作品でした。 特別賞の王妃は弁色舌点の色が鮮やかでした。その他薩摩産の無銘の更紗や球磨産の更紗天照などは珍しい作品でした。 青花では延光寺の青や原生林、利根が目を引きました。  今年度から優勝と金賞は一人三点とし、それを超えて選ばれた場合は特別賞にしました。 早花会は特にその年の気候に左右されます。まして今回は台風接近で大荒れ。出品協力ありがとうございました。

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第四十八回 新芽展
    令和元年七月二十一日 出展数 三二鉢

優勝 豊 雪 土 佐   西村 和久
寒蘭部門
無 地
  金賞   無 銘    土 佐   平崎 清志
  銀賞   里 山    土 佐   後藤 三男
  銅賞   幽 篁    土 佐   圓尾  榮
西谷・柄物  
  金賞   神 光    西 谷   宮崎  満
  銀賞   姫百合    西 谷   圓尾  榮
  銅賞   該当なし
チャボ  
  金賞   紀ノ川    紀 州   岩本 孝之
  銀賞   該当なし  
  銅賞   該当なし
春蘭部門
無 地  
  金賞   天紫晃    長 野   西村 尚登
  銀賞   夢富貴    交 配   渋谷  博
  銅賞   天紫晃    長 野   岩本 孝之
柄 物
  金賞   花大臣    九 州   渋谷  博
  銀賞   金玉殿    福 島   渋谷 明義
  銅賞   金玉満堂   韓 国   平井  裕
チャボ 
  金賞   出展なし
  銀賞   
  銅賞   
山野草部門
  金賞   無 銘    富貴蘭   岩本 孝之
  銀賞   銀 雪          圓尾  榮
  銅賞   朱天王    富貴蘭   渋谷  博

新芽展 審査報告 審査部

今年は梅雨が長引き野菜類の作にも悪影響が出ている気候でした。東洋蘭の作にも影響が出ていると思われ、出展数が昨年より2鉢少なく32鉢でした。
新芽展の審査は会則により、会員の投票で決めおります。
その結果、優勝は寒蘭部門の土佐西谷産の豊雪に決まりました。4篠の成木に新芽1本が上り、最上の作品でした。その新芽は17糎程あり、西谷産特有の乳白色に出て、冴えがあり、しかも葉先が新葉様に開くことなく、作者の力量が現れ、優れた作品でした。
その他、金賞の中で目を引いた作品は、寒蘭部門の土佐産の無銘品で、太い新芽15糎程、伸びのある新芽が上がり株立ちの成木には葉傷もなく立派な作品でした。
次に春蘭部門の花大臣です。花大臣は玉垂冠からの株別れとい言われています。美しい散斑の親木に新芽2本が上がり、極黄色に出て芽先には紺冠を有し、優れた作品でした。
ほか、山野草部門金賞の無銘の富貴蘭です。桃色の小花ですが、富貴蘭としては不似合いとも思われる可愛い珍花に皆さんから衆目された花でした。

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第五回 九華・エビネ・山野草展

平成三十一年四月二十九日 出展数 三三鉢

優 勝
 大一品(九華)        岩本 孝之

一茎九華部門
  金 賞    江山素        後藤 三男
  銀 賞    該当なし        
  銅 賞    該当なし        
エビネ部門
  金 賞    織 姫        宮崎  満
  銀 賞    太 陽        渋谷  博   
  銅 賞    紫 宝        岩本 孝之
山野草・その他部門
  金 賞    雪持草        宗行 正明
  銀 賞    右近丸(セッコク)  圓尾  榮
  銅 賞    雷 山(セッコク)  平崎 清志

 

審査報告 審査部

 出品数は昨年より8鉢多く33鉢でした。審査は会則に基づき会員の投票で決めました。
優勝は九華部門の大一品です。花は黄緑色によく冴え、葉上に抜け10輪咲きでした。大一品は老化が進むと花弁が後方に反る難があるのですが、その難もなく近年出展された大一品の中では一番優れた作品と思われます。
九華部門の金賞は江山素です。大輪10花を付け、見るからに手を加えてない自然観が溢れた作品でした。江山素は素心の中で一番雄大な花と言われていますが、花茎が伸び難い花でもあります。この花は葉上に抜けて九華特有の緑弁濃く良い作品でした。
エビネ部門の金賞は織姫です。織姫独特の赤紫色濃く冴えがあり丸みを帯びた花弁、見事な花でした。
織姫は原種で一世を風靡した花です。今では交配種の時代になりましたが、趣味者として、是非一鉢は持っておきたい花だと思われます。
 山野草部門の金賞は雪持草です。黒味を帯びた濃紫弁に雪持草特有の白縞を引き、花の中央に白い餅状の付属体をつけ、大輪の5花咲きでした。作者の情熱と力量が感じられる立派な作品でした。
その他、入賞花でないのですが印象に残った花は、エビネ部門の紫宝です。コオズ産の大紫香によく似た花ですが大紫香より紫色が濃く、良い花と感じました。
次にさくら草です。淡い桃色の大輪が実に可憐で可愛く、心を和ませる花と感じました。
因みに、さくら草は名前のとおり桜の花に似たピンク色の可愛い花です。その歴史は古く江戸時代から親しまれ、四月から五月にかけ咲く花です。丁度エビネ展の会期には理想の花です。
山野草の出展は会場が和みます。一鉢でも多く山野草の出展を期待しております。

 

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第四回 柄物展

    平成三十年九月二十三日 出展数 三九鉢
優勝 
金 剛 宝 韓国春蘭  渋谷  博
寒蘭柄物部門 
   金賞   天 山  球 磨  植田 良夫
   銀賞   春 光  薩 摩  渋谷  博
   銅賞   春 光  薩 摩  平崎 清志
春蘭柄物部門 
  金賞   無 銘       平井  裕
   銀賞   天 遊       宮崎  満
   銅賞   稲 妻       渋谷 明義
寒蘭チャボ・変り葉部門
  金賞   無 銘       平崎 清志
   銀賞   渚         植田 良夫
  銀賞   該当者なし
  銅賞
春蘭チャボ・変り葉部門
   金賞   達 磨       平井  裕
   銀賞   文 珍       平崎 清志
   銅賞   該当なし
山野草・その他部門      
   金賞   オオハンゲ     宮崎  満
   銀賞   一つ葉       宗行 正明
   銅賞   薩摩錦       岩本 孝之

 

柄物展審査報告-審査部-

今年の出品数39鉢でした。
寒蘭柄物部門6鉢、春蘭柄物部門22鉢、寒蘭チャボ・変わり葉部門2鉢、山野草・その他の部門9鉢の出展でした。
審査は規定により、会員の投票により決めました。
優勝は、春蘭柄物部門の金剛宝に決まりました。金剛宝は韓国産、日本で命名された中透葉です。まだ、中木ですが新木が左右2本上がり葉幅を引き、濃緑深覆輪に極黄の中透縞です。葉傷もなく名品の特徴がよく現れた見事な作品でした。
寒蘭柄物部門の金賞は薩摩産の天山でした。天山は一般的に作り難い品種ですが、この作品は葉傷がなく、しかもその新木が親木以上に成長し、作者の力量が現れた作品でした。ただ、優勝の金剛宝と比べ天山は地味柄であり、若干及ばなかったと思われます。
春蘭柄物部門の金賞は無銘でした。少し小振りの作品でしたが、葉傷みがなく、新葉の縞柄がよく冴え、優れた作品でした。
寒蘭チャボ・変り葉部門の金賞は、無銘の肉厚立葉です。新木が上作に上がり力強く目を引く優れた作品でした。
春蘭チャボ・変り葉部門の金賞は、達磨です。暗褐色で肉厚の羅紗チャボ葉、達磨独特の葉繰りが美しく優れた作品でした
山野草・その他部門の金賞はオオバンゲでした。綺麗な斑柄で風情があり、会場が和む雰囲気があって、柄物展に相応しい作品でした。
なお、出展数部門のことですが、本年度から、寒蘭チャボ・変り葉部門と春蘭チャボ・変り葉部門を新たに加えることにしました。その主旨は柄物に馴染みのない方にも出展できるように配慮しました。

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第五回 春蘭展

    平成三十一年三月一~三日 
出展数 一五二鉢
総合優勝   錦 山   林  淳浩
加西フラワーセンター長賞 富士の夕映 佐藤 清昭
相生園芸センター賞   女 雛       渋谷  博
赤花優勝    満 宮(仮称)   宮崎  満
  赤花金賞    女 雛       森江 潤二
赤花銀賞    祥 紅       植田 良夫
  赤花銅賞    女 雛       林  淳浩
朱金花優勝   燦 宝       宮崎  満
朱金花金賞   春 華       林  淳浩
  朱金花銀賞   南紀の輝      渋谷 明義
  朱金花銅賞   女 神       平崎 清志
  黄花優勝    黄 鷺       佐藤 清昭
黄花金賞    金牡丹       平井  裕
  黄花銀賞    黄麗殿       岩本 孝之
  黄花銅賞    黄ノ司       森江 潤二
紫花優勝    大黒天       渋谷  博
紫花金賞    金 山       佐藤 清昭
紫花銀賞    紫紅梅       平井  裕
紫花銅賞    該当なし
無 銘
素心花優勝   青 宝       宮崎  満
素心花金賞   熊野白蘭      西村 和久
  素心花銀賞   露 雪       岩本 孝之
  素心花銅賞   大青海       渋谷  博
青花優賞    百 舌       平崎 清志
青花金賞    木 霊       林  淳浩
  青花銀賞    無 銘       植田 良夫
  青花銅賞    清 流       中西 昭彦
  
複色花優勝   玉垂冠       植田 良夫
複色花金賞   神 秘       中西 昭彦
  複色花銀賞   幽谷殿       森江 潤二
複色花銅賞   奥州路       平崎 清志
変り花優勝   小胡蝶       平崎 清志
変り花金賞   兜 丸       西村 和久
  変り花銀賞   安 珍       林  淳浩
 変り花銅賞   雲 海       岩本 孝之
豆花優勝    清 丸       佐藤 清昭
豆花金賞    梵 天       林  淳浩
  豆花銀賞    小 鉄       平崎 清志
  豆花銅賞    該当なし
 その他の花優勝 紫震殿       林  淳浩
  その他の花金賞 鴻寿白       植田 良夫
その他の花銀賞 雪 映       平崎 清志
  その他の花銅賞 鴻寿白       佐藤 清昭
中・台花優勝  西神梅       渋谷  博
中・台花金賞  翠一品       西村 和久
中・台花銀賞  緑 雲       岩本 孝之
中・台花銅賞  翠 蓋       渋谷 明義
山野草優秀勝  駿河覆輪      西村 和久

春蘭展 審査報告 -審査部-

 今年の春蘭展が3月1日から3日に亘り行われました。出品数は昨年より29鉢少なく152鉢でした。
鉢数が少なかったのは、今年も異常な猛暑で全国的に花が数が少ないと言われていたこと、それに加え会期が早いことが原因したのだと思われます。
 今年から出展部門が一部変更しました。それは韓国花部門を除き、新たに紫花部門を加えました。
審査は例年どうりで、11部門の優勝花の中から一番優れた花を総合優勝とし、次いで加西フラワーセンター長賞、相生園芸センター賞を選出しました。
 総合優勝は、紫花の錦山に決定しました。4花を付け、
紫色濃く冴え、花軸の徒長もなく、葉と花の調和が抜群で総合優勝として申し分のない最高作品でした。加西フラワーセンター長賞は、富士の夕映で2花を付け、花数が少ないとは言え、抜群の冴えのある朱金色、花も上下にバランスよく咲かせ、優れた作品でした。相生園芸賞は赤花の女雛で2花を付け、赤色濃く、女雛特有の可愛い花形で、優れた作品と評価しました。
次に優勝花の中で、特に優れた作品は、赤花部門の宮満(仮称)3花付きで、赤色濃く内弁の抱えよく、優れた作品でした。朱金部門の燦宝は素舌で朱金色によく冴えた作品でした。花付きのよくない品種ですが、久しぶりに珍しい花を見せてもらいました。その他、優勝花の中では、今年から新たな紫花部門の大黒天です。昨年は韓国部門で入賞した花でしたが今年は株も充実したこともあって、紫色濃く衆目された作品でした。次に、変り花部門の小胡蝶は鳥取県産で蝶咲独特の可愛い花で、日本産としては珍しく目を引いた花でした。中・台部門の西神梅は大輪の3花、梅弁で光沢のある淡翠緑色に咲き印象的でした。
 今年は花数が少なかったとは言え、優れた発色の作品が多く、レベルが高くなったことを実感しました。
 なお、今年の参考出品は、昨年、総合優勝の篤姫と、加西フラワーセンター賞の白鷹です。花は昨年以上に優れ、出展者の力量が現れた作品でした。

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入賞のよろこび----

◎寒蘭本花展

総合優勝 翡翠
植田良夫

阿波産。大輪平肩咲の青々花で、随分長く作っている銘品です。今後もう少し大きく上作にして一層よい花を咲かせたいと思っています。

加西フラワーセンター長賞 仁王
 宮崎 満

仁王は、日向産紅花で花弁が広く花間も取るので、良く入賞する品種です。私はあまり手を掛けないのですむので楽です。今後も良い花を咲かせたいと思います。
相生園芸賞  豊 雪
渋谷  博
豊雪は多花性の品種です。成木なら10輪以上の花芽がつきます。展示には天花2~3輪が蕾であるころが理想だと私は思っています。また、花の冴えは花軸を見れば分るとも言われます。
出展した豊雪は、8輪、天花が蕾で、豊雪としては輪数が少ない作品でした。ただ、咲き始めたのが遅かったのが影響してか、花から花軸まで白金鵄によく冴え、久しぶりに豊雪らしい冴えのある花が咲いてくれたと思います。

白花優勝 大雄
 宮崎 満
大雄は十五年前にバック二本を棚入れした物です。系統は朝隅系で少し立葉なので葉折れはありませんが、作上りしにくいので、今まで出展しませんでした。今回ようやく木に力が付き、花を咲かせたので出展したしだいです。

紅花優勝 室戸錦 
渋谷  博
今年の室戸錦は9輪咲きました。室戸錦は中輪の品種ですが、大輪気味に咲き、特有の平肩で紫紅色濃く、よく冴えて咲いたのがよかったのではないかと思っております。

文人作優勝 翡翠
宮崎 満

今回私が出展した「翡翠」は阿波寒蘭会登録の青々花で良く入賞する品種です。まだ中木の株ですが、花が大きく咲いていたので出展しました。今後は株を大きく作り見応えの有る花を咲かせたいと思っています。

桃花優勝 白梅(仮名)
植田良夫

日向の蘭商より七~八年前に手に入れた品種を(仮名)白梅とあり葉芸で縞柄です。入れた時は、縞もはっきりしていましたが、薄くなり作場かと思っていますが、花も紅~桃へと変化したように見受けます。この花も試行錯誤を重ねながら作っています。

更紗花優勝 大弁慶
植田良夫

 この花は、紀州産の更紗広弁、ベタ風で長く作っていますが、我が棚では、二度目に咲かせた花です。まだまだ色、型、大きさが良くなる銘品だと思って永く作っていくつもりでいます。

青花優勝 古都
西村和久

 青花優勝の栄誉を賜りありがとうございます。この花は二〇一二年に業者から中木を入手しましたが、翌年の開花は二輪で木に力が無いのかベタ舌の片方に切れが入りガッカリしたのを思い出します。数年後には木も大きくなり花数も増え、今回やっと出展できました。蘭名と花形、花色が魅力的で大変好きな花であり、これからも大切に育ててもう一度上作で今後出展したく思います。

黄花優勝 無銘(黒尊金鵄)
岩本孝之

この花は以前大阪のツインタワーで展示会をしていた時に、友人の出展した花を見て気に入り、後に株分けしてもらいました。新芽にハケが入り、実にきれいです。花は中輪ですが、キリッと引き締まった三角咲きで、白黄に冴える花です。中チャボとは言いませんが、あまり大きくならないのも気に入っています。今回も小振りでスッキリ姿よく咲いてくれました。
柄物部門優勝  天 山
渋谷  博

 天山は葉に紺覆輪中押し縞が入り、薩摩産を代表する古い品種です。
今年咲いた花は7輪、作り難い品種としては、最上作と思っています。花は大輪で縞が入り美しいのですが、内弁が開き副輪が落肩です。これが天山の特徴でもありますが。
花形についてはそれぞれ好みがありますが、天山としては上作であると満足しております。

◎寒蘭早花展
優勝 日向の誉
植田良夫

この木は古くから作っている日向産の濃紅色三角咲き舌点に特徴があると思います。他に日南系とは、少し違いがあると思います。まず、濃紅、黒紅と色の出方は、時期作場の陽光によってでも違うと思います。紅桃系は鮮やかな色を出すには、夜露に充てればと聞き試行錯誤で置き場も作っています。


◎新芽展
優勝 豊雪
西村和久

優勝の栄誉を賜りありがとうございます。この花は二〇一五年に知り合いから分けていらだいたもので、我が家の棚では同種三鉢目となります。昨年は新木止まりであり植え替えも早めに行い今年の新芽に期待をし、冬場は一番日の当たる場所に置いていました。このような大きな新芽が出たのは今までの栽培で初めてのことです。他の蘭にもこのようなことを期待して頑張ろうと思います。

◎春蘭展
総合優勝  錦 山
 林  淳浩

 この度、私が出展した錦山が総合優勝の栄誉を頂き、ありががとうございます。
錦山は韓国産紫花です。平成26年、蘭会の有志で某業者店を訪ねたときに、小苗2条を棚入しました。
 この時、友人が、そんな小さな木は育たんで・・。
と言われた程の苗木でした。その後、棚入れしたことさえ忘れていましたが、3年前、小さな花芽がついているのに気が付き驚きました。
 そして棚入れして5年目の今年、紫色濃く充実した4花が咲いてくれました。
 蘭は辛抱草!とも言われます。近年になり、やっと満足する花が咲きはじめました。東洋蘭を養っていてよかったと実感しています。

加西フラワーセンター長賞 富士の夕映
佐藤清昭
私が、出展した富士の夕映が加西フラワーセンター長賞を頂き有難うございます。富士の夕映は、古い品種で私が好きな花の一つです。十四年前に棚入れして作っております。これまで何度か出展しておりますが、今年はこれまでにないほど発色が良く整った花容で見事に咲きましたので出展した次第です。

相生園芸センター賞 女雛
                  渋谷  博

 今年咲いた女雛は2花咲きであったので、入賞は期待せず展示会場が賑わえばよいつもりで出展しました。
この花は赤くよく冴え、円みを帯び女雛の特徴がよく表れていたのがよかったのかと思います。

豆花優勝 清丸
佐藤清昭

この度、私が出展した清丸が豆花部門で優勝させて頂き有難うございます。清丸は、今は亡き蘭友の遺品として六年前に小木を頂き育てた蘭です。今年初めて、円弁抱え咲きの可愛い豆花が三輪見事に咲きましたので、出展した次第です。蘭友の思い出のある蘭ですので、大事に育てていきたいと思います。
複色花優勝 玉垂冠
植田良夫

春蘭複色花ですが永く作っており作場・陽光によってその年の色の出方が変わり明るい処では黄色、緑が濃く出るように思います。開花時期は三月下旬ごろの咲きが良いように思います。

素心花優勝 青宝 宮崎 満

青宝は、かなり前にSさんにバック木を棚入れした物で、ようやく花を付けるように成りました。初めは三本立ちで咲かせていた物を、バランスが悪いので、二本立ちにして出展したのが、良かったのかと思っています。

紅花優勝 満宮(仮名)
宮崎 満

今回入賞した紅花は、歌麿×女雛の交配種です。春蘭の紅花の色出しは、花芽の遮光をどのタイミングで行うかで、大きく変わる物です。今回出展した(仮称)満宮も、七割ぐらいで、名人の手に掛かれば、もっと良い花色で咲くことを願っています。

朱金花優勝 燦宝
宮崎 満

私が、春蘭を作り始めて十年ほどに成ります。展示会で、燦宝の花を見たことが無く、今回ようやく二本立ちの花が咲いたので、出展したしだいです。燦宝は根が弱いので肥料を、多くしない方が良いかと思います。

 紫花優賞 大黒天
渋谷  博

大黒天が咲き初めてから今年で2年目になります。初花は弱々しくよくなかったのですが、今年の花は、何とか見られるように咲いてくれました。
大黒天は韓国産の古い花ですが、現在、持っている愛好者は少ないと思います。韓国産の紫花は、日本春蘭と異なり、特有の色素から、キヤップなしで紫色濃く咲き優れた品種です。
今後は、より上作に仕上げ、一層満足する花を咲かせたいと思っています。

変り花優勝 小胡蝶
平崎 清志

小胡蝶は昨年、株立ちになったので株分けした。それが影響してか今年は2輪しか花がつきませんでした。
ところが花が大きく円弁に咲き、よく陽を採ったことで黄緑濃く咲き、小胡蝶の特徴がよくでた作品に仕上がったと思いります。

中・台 優勝 西神梅
渋谷  博

西神梅は春蘭を作り初めのころ、最初に棚入れした花の一つです。もう何十年になるか記憶にありませんが中国春蘭の中では私好みの一品です。
昨年、随分大株になったことで株分けし、その一鉢に大輪の花が3輪付きました。花が丸味を帯び、中国春蘭独特の光沢のよい淡翠緑色に咲いてくれました。
近年、中国春蘭は現代の趣味者には関心が少なく残念なことです。

◎九華エビネ展優勝 大一品(九華)
岩本孝之

私は九華が好きで十鉢ほどあります。以前は会員の中にも九華を作っている方がかなりありましたが、最近は少なくなりました。私の九華は前会長の渋谷さんや古くなにわ蘭友会の元会長の広橋先生に譲っていただいたものです。大一品は強い花で今では四鉢になっています。出品したのはやや小振りのものでした。ちょっと花が弱いかと思っていましたが、それが功を奏して上品に見えました。「大一品」は中国語で「まあ、素晴らしい花!」という意味だそうです。この花を見た中国人の感動がそのまま名前になったと聞きました。黄味が乗らず青が冴えると震えるような素晴らしい色になります。ありがとうございました。
◎ 柄物展 
優勝 金剛宝
渋谷  博
金剛宝は韓国産、中透縞の名花です。一昨年、友人から中の小木3篠を譲り受けました。非常に作りやすい木のようで今年、新芽が2篠右左に上がり、しかも上作に成長、金剛宝特有の葉幅を引き濃紺に中透け縞を引き、その美しさに驚きました。金剛宝は大葉性と聞きます。このころが見ごろではないかと思っております。

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今年の春蘭展をみて 渋谷  博

平成二十六年、本会と兄弟会である幽香会が合併したことで、春蘭展は従来どおり加西フラワーセンターで開催することになった。
幽香会の年間行事は、春蘭展を始めとし、えびね展・九華展、柄物展を開催している同好会である。その起こりは関西寒蘭会の会員で創立された会であるが、高齢化により会員が減少してきたことで合併したのである。
合併当初、会員の大半が春蘭には関心がなく、広い会場に似合う鉢数を揃えることで、会長以下、随分苦労したが会員の協力で何とか鉢数を揃えることができた。しかし、発色の良い花が少なく、綺麗に咲かせた花を見て本人に尋ねると、たまたま色よく咲いたとのこと。これでは継続性がなく、期待できないと判断した。
加西フラワーセンターは多くの遊園者が訪れる会場で、この展示内容では申し訳ないと思った。会長の提案で総会や展示会時など、機会ある度に春蘭の作り方や咲かせ方について話し合った。
平成二十八年、会長の依頼で「春蘭の咲かせ方について」と題して年会誌に、わかりよく掲載した。
その効果があったかどうかは分からないが、年毎に発色の良い花が出展しはじめた。
今年の春蘭展において、出展数が一八一鉢、その中で、色花部門では赤花三四鉢、朱金三一鉢、黄花三六鉢、色花の出品が目立ち、しかも今までにないよい発色の花が出揃い、会場が賑わった。
近年、各地の春蘭展をみて、西洋蘭化してきたと思う。それは寒蘭界にも言えることだが、花が大きければよい、珍しければよい、と言うものではない。
東洋蘭は、侘・寂の世界である。春蘭は山里に咲く花と言うイメージが強い。それが日本の美意識の一つでもあり、派手な世界ではない。
日本春蘭は、春蘭特有の地味で、僅か濁りを帯び深見がある色調の花が多い。後冴種の赤花には、その特徴が顕著に現れる。その花に遭遇すると心魅かれ安らぐ。
新花や交配種を求めることがよくないとは言わないが、昔からある日本春蘭が忘れがちにある現在、貴重な日本春蘭を大切に生育し、将来に向け継承してもらいた。
この意図が東洋蘭界の活性化を損なうと言われるかもしれないが、趣味者の一人として本意を述べたのである。
記事の終わりに一言。春蘭の発色方法を理解していても、毎年よい花が咲いてくれるものではない。その年の気象条件、株の生育状態、作場の環境など、その微妙な変化から発色が良くも悪くもなる。それがこの世界の難しさであり面白さでもある。
幽香会と合併を勧めたことで、初年は不安と責任を感じていたが、良い花が出展されるようになったこと。加え、合併したことで四季折々の展示会が行われ、会員の親交も一層深まり、楽しくもあり安堵している。

蘭の川柳--岩口善兵衛--

一鉢の花の不思議が運の尽き
職場の先輩からもらった一鉢が花をつけた。その不思議に魅かれて始めた蘭作りが今や数百鉢!これは棺桶までいきますなあ。
蘭菌の増殖仕事手につかず
蘭を始めて五年十年は(いやもっとかも)頭の中は蘭のことばかり。妻も子も忘れ、職場でも  蘭のことばかり考える。そら、ミスも出まっせ。現に左遷された人おります。
医者教師警官弁護士はまります
この手の職業の人が蘭会にはけっこういる。いわゆる「先生」というやつ。お固い職業の人がはまるとこわいで。世の中知らん、加減を知らんいうやつや。
ガラス張り千五百万の蘭飾る
大阪阪急七階の寿楽園の展示だったか。寒蘭柄物の出はじめだった。今思えば「正気の沙汰かいな」という値段。豊雪も五百万だったかな。
五千円蘭の足しにと妻がくれ
展示会に出かけると言うと、妻が五千円くれた。おおきによ。ほんでもなあ、五千円では蘭は買われへんね。
蘭の葉を摘んでおひたしああ妻よ
今日のおひたしは葱かいなほうれん草かいなと聞いたら、「温室の長ーい葉一握り摘んできた」と妻が言う。おい、なんちゅうことすんねん!
洋蘭は隅へ寒蘭幅きかす
妻は洋蘭、わしは東洋蘭と住み分けしていた温室も、シンビ・カトレア隅へやり、高い寒蘭幅きかす。
妻逝きて保険さっそく蘭に替え
あの花どないしても欲しかってん。お前も買えいうとったやないか。やっと手に入ったで。この花持っとるやつは三人とおらん。
妻よりも愛した蘭を抱いて寝る
お前と添うたは四十年。蘭作りは五十年や。山採りの蘭にお前の名を付けたこともあったなあ。今じゃ蘭はわしの嫁はんや。

(右の川柳はすべて実話でなく、フィクションも交じってます)

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農薬の基本とスプラサイドに代わるカイガラムシの農薬について
渡辺 交

農薬は植物を栽培する人々にとって必要不可欠なものですが、農薬について学ぶ機会はほとんどありません。そこで農薬の基本的な情報をまとめてみました。農薬には水和剤、乳剤、フロアブル、粒剤と様々な形態があるのでまずはその解説をして、殺菌剤の予防剤と治療剤の使い分け、それから生産中止となったスプラサイド乳剤に代わる新しい農薬を紹介します。
粒剤
 粉または顆粒状で、植物の根元にまくタイプの農薬です。成分が根から吸収されて植物全体に行き渡り、効果を発揮します。効果が続くのは約四十日間です。農薬成分が行き渡るのは地上から一m以内とのことですので、大きく育った作物にはあまり効果はありません。
水和剤
水に溶かして使う粉状の薬のことで、殺菌剤に多く見られます。利点は乳剤やフロアブルより価格が安いことです。水に溶けずにダマとなって残る場合があるので、良くかき混ぜて使いましょう。展着剤を入れると葉になじみやすくなり、薬の効果が高まるので推奨します。水をはじきやすい植物には展着剤を多めに入れます。薬液をしばらく放置しておくとタンクの底に沈殿するので、その都度攪拌しなければならないこと、それから植物に農薬の跡が付きやすいのが欠点です。
乳剤
有効成分を有機溶剤に溶かしたもので、水に入れると乳白色になることから乳剤と呼ばれます。乳剤はそれ自体が展着剤の役割を果たすので、新たに展着剤を加える必要はありません。殺虫剤に多い形態で散布跡は残りにくいのですが、水和剤よりも値段が高くなります。有機溶剤が含まれるため車の塗装を溶かす恐れがあること、原液は火気厳禁なこと、有機溶剤が薬害を引き起こす場合があることが欠点です。
フロアブル
元は水和剤なのですが、水に溶けやすいよう液状にしたものです。白いドロッとした液体なのが特徴です。長く保管していると液が分離するので、良く振ってから使わなければならないこと、粘性があるので計量が少々やりにくいことが欠点です。

農薬の希釈方法
 農薬は最初に少量の水で溶いてから、作りたい分量まで水を足していくのが基本です。最初に溶かすのは展着剤で、次に乳剤、フロアブル剤、最後に水和剤という順番で溶かします。展着剤は界面活性剤という水に濡れやすくする成分が主なので、先に入れておくと水和剤が溶けやすくなります。

農薬の散布
 散布は隅々まで薬液がかかるようなるべく圧力を高くします。市販の手動蓄圧式の噴霧器が手軽です。ポンプを何回も押し込むのは大変という方には電動式もあります。葉の表だけでなく裏側にもかかるよう散布しましょう。

 次に殺菌剤、殺虫剤について解説します。
○殺菌剤
殺菌剤には予防剤と治療剤の二種類があります。これはとても重要な情報なのですが、なぜか農薬の説明書には書いておらず、専門書で調べる必要があります。そこでランによく使われる殺菌剤を予防剤と治療剤に分類してみました。
○予防剤
 ダコニール、ジマンダイセン、キノンドー、サンヨール、オーソサイド、フロンサイド
○治療剤
 ベンレート、トップジンM、トリフミン、リゾレックス、ロブラール、リドミル、バリダシン、タチガレエース、アミスター、
予防剤と治療剤の差は浸透性の有無です。予防剤は植物表面までしか到達できず、病気が出たものにかけても効果がありません。要は健康な植物が病気にならないように保護するものが予防剤ということです。
治療剤は植物内部に染み込んでいき、侵入した病原菌を殺すことができます。治療剤は効く病原菌が限られること、耐性菌が出やすいという欠点があり、予防剤は幅広い病原菌に効果があり、耐性菌が出にくいという利点があります。 普段は予防剤を使い、病気の兆候が現れたときに治療剤を使うのが賢い使い方です。
ベンレートとトップジンMの関係
ベンレートの有効成分はベノミルで、トップジンMはチオファネートメチルなのですが、どちらの成分も植物に吸収されるとカルベンダゾールという物質に変化し、これが殺菌作用の正体であることが明らかにされています。したがって、ベンレートとトップジンMは同じ農薬扱いとなるので連用にならないようにしましょう。
○腐敗病について
新芽のすっぽ抜け症状から始まり、やがて株全体が枯死してしまう恐ろしい病気でフザリウムが原因と推測されます。従来はリゾクトニアやピシウムといった病原菌が主で、新芽だけすっぽ抜けになり株全体が枯死することは少数でした。フザリウム以外の菌についても予防していきます。
○効果のある農薬一覧
腐敗病(フザリウム菌)ベンレート、トップジンM、トリフミン、タチガレエース、フロンサイド
すっぽ抜け(リゾクトニア菌)リゾレックス、バリダシン、オーソサイド、タチガレエース、ダコニール
すっぽ抜け(ピシウム菌)タチガレエース、オーソサイド、リドミル
腐敗病には殺菌剤を土壌灌注することで予防します。有効な農薬の多くは治療剤ですので、耐性菌が出ないよう複数の農薬を用意してローテーションを組んで使用していきます。タチガレエースは全部の菌に効くからと言って毎回毎回まき続けていると菌が耐性を付けて効かなくなってしまいます。
ローテーションの例
タチガレエース→オーソサイド→ダコレート(ダコニールとベンレートの混合剤)→バリダシン

○殺虫剤
寒蘭の害虫は主にカイガラムシとハモグリバエに大別されます。それから昆虫ではありませんがナメクジの被害も無視できません。
○カイガラムシの農薬
カイガラムシはロウ質の殻に覆われているため農薬が効きにくく、効果のある農薬は少ないのが現状です。スプラサイドが長年使われてきましたが、生産中止となったため販売店の在庫が無くなり次第入手できなくなります。その代わりに良い農薬が発売されたため、無理にスプラサイドを探し回る必要はありません。
トランスフォームフロアブル
スプラサイドに代わって登場した新農薬で、カメムシ目に有効(カメムシ、アブラムシ、カイガラムシなど)です。有効成分はスルホキサフロルで、浸透移行性と浸達性に優れ、さらに残効性もあります。農薬がかからない場所に潜んだカイガラムシにも有効です。
普通物なので購入に印鑑は不要です。カルホスとは別系統の農薬のため、カイガラムシを集中防除する際も連用を避けられます。
スプラサイド乳剤(現在は生産中止、販売店の在庫限り)
カイガラムシの農薬ではカルホスと並んでよく使われる農薬です。有効成分はDMTP(メチダチオン)という有機リン系殺虫剤で浸透性があり、チョウやガ、コナジラミ、カイガラムシ、アザミウマ、カメムシなど幅広い害虫に有効です。効果の持続時間は長めですが、カイガラムシに対しては幼虫期(五~六月と八~九月)に散布するのが最も効果的です。劇物に指定されているので、購入には身分証明書と印鑑が必要です。500mlのみとなります。
カルホス乳剤
カイガラムシには前述のスプラサイドと同じくらいよく使われる農薬で、有機リン系に属します。有効成分はイソキサチオンで、チョウ・ガ、カイガラムシ、甲虫類など幅広い害虫に有効です。効果の持続時間は長めですが、浸透性が無いのでムラ無く散布する必要があります。カイガラムシ防除には幼虫期に散布するのが効果的です。土壌中では最終的に炭酸ガスに分解されるので土壌汚染を起こしません。温血動物では速やかに体外に排出されるので、人体への毒性は低レベルです。これも劇物指定なので、購入には身分証明書と印鑑が必要です。カルホスは100ml瓶があります。
オルトラン水和剤
ホームセンターでよく売られている殺虫剤の代表格です。有機リン系に属し、浸透移行性があるため粒剤での販売もあります。幅広い害虫に効果があり、カイガラムシにも効くとされますが、幼虫にしか効果が無いのが残念です。
アクテリック乳剤
これもオルトランと同じく幼虫の時にしか効果がありません。他の農薬より刺激性が強いため、散布時に目や皮膚に付かないよう注意します。
マシン油乳剤
名前のとおり機械油で、希釈倍率が百倍と濃いのが特徴です。アタックオイルやトモノールなど、様々な商品名で売られています。気門を塞いで虫を窒息死させるためあらゆる昆虫に効果があるですが、気温が高い時期の使用は葉の枯れ込みや黒化といった薬害が生じるため冬期に散布するのが鉄則です。ホームセンターで売っているカイガラムシ用のスプレーはこれが主成分です。

○ハモグリバエ
ハモグリバエは植物内部に卵を産み付け、幼虫は内部を食い荒らしながら成長しサナギとなって羽化します。そのため浸透移行性のある殺虫剤を使うのが基本です。ベストガード粒剤、ダントツ粒剤、アルバリン粒剤、モスピラン粒剤、プレバソンフロアブル5などを散布します。
粒剤は一鉢あたり2gを用土表面にまきます。効果があるのは四十日間なので、九月上旬にまいて、二回目を十月中旬にまけば寒蘭の蕾の時期をほぼカバーできます。
網戸のある蘭舎であれば網戸を一ミリ以下の細かいものにすれば高い防除効果があります。あと、黄色いものに惹かれるので黄色の粘着シートを棚の周囲に設置すると捕殺可能です。

○ナメクジ
ナメクジは虫ではなく、貝類に属するので殺虫剤は効きません。色々な駆除剤がありますが、多くは「メタアルデヒド」を含むものと「リン酸第二鉄」を含むものの二種類に大別されます。どちらもナメクジが食べて効果を発揮する毒餌タイプとなっていて、ナメクジの出る場所にパラパラとばらまきます。メタアルデヒドは水で流れてしまうので、水がかからないように工夫が必要です。リン酸第二鉄系は水で流れないので、水のかかる場所にはこちらを使用します。
メタアルデヒド系
 ナメキール、ナメキット、デナポン5%ベイトなど。
リン酸第二鉄系
 スラゴ、ナメトールなど
また、銅を嫌う性質があるので、棚の脚に銅線を巻いておいたり、銅を含む殺菌剤(サンヨール、キノンドーなど)を散布することも効果があります。
以上、寒蘭に良く使われる農薬及び害虫について解説してみました。皆様の参考になれば幸いです。

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男と女のオムニバス ー 令和異聞 洞 富貴男

一 夫婦の愛は三千万?
加古川あたりの農家のご夫婦の話。ご主人は金野剛男という。背は低いががっしりした身体付き。目がギョロリと大きい。「目玉の金野さん」を略して「玉金さん」と呼ばれていた。奥さんは五つ違いの静さん。名前の通りおとなしい人である。玉金は広い農地を持っていて、野菜と花を作っている。元は貧しい小作の家だったが、働き者でしかも始末に始末をする生活。だんだんとお金を貯めてその度に近隣の農地を買い、面積を広げて行った。路地栽培の金盞花、ストック、温室のスイートピーやカーネーションなど、花卉栽培を主力にして、そのあたりの農家でも指折りの家になった。昔は風が吹くと飛ぶような藁葺きの家だったが、今は大きな庭に松の木が植えられている。お堀も見える。朝は暗いうちから夜の目も見えなくなるくらい遅くまで働いた。静も夫によくついていった。 子どもらは一人前になって出て行った。みな一流の勤め人である。二人になったので、花作りは少し減らした。今まで働いて貯めたお金は充分ある。近所の人に事ある度に自慢した。貯金通帳を見せた回ったこともある。これがわしの人生のがんばった印や。昔と比べてみい、ようここまで来たで。玉金の成功の証明は貯金通帳であった。わしは中卒やけんど、子どもらはみな大卒じゃ。と得意であった。ところが玉金は七十になって、前立腺ガンになった。どうも小便の切れが悪い、夜中に何度も起きる。おかしいなと持って診てもらったら、前立腺のガン。手術した。手術は成功して小便の方はよくなったが、例のものがまるで役に立たない。早くいえば男の用をなさなくなった。花卉組合の旅行に行って仲居さんに冗談を言ったり、近所のおばはんにも下品な悪ふざけをしたりしていた元気者がしょげこんだ。「わしはもうあかん。こら、嫁はんの相手もでけん」。
「ほんでなあ、あれが役に立たんようになってしもた、お前の相手もでけへん」「へえ」。例の貯金通帳を見せて、「三千万やっさかい、お前は実家へ帰れ」と言った。実家へ帰れと言われて静子はびっくりした。「あんた、なに言うてんの。一緒になってもうじき五十年でっせ。」「考え直して、」「今頃実家やなんてあほな」と色々言うても、この夫婦は玉金が決めたらそれが決まり。夫の断固とした物言いに静子はさからえない。
しばらくして玉金は静を夢前の実家へ送って行った。実家では静の父親は死に、母親の美里がまだ生きていた。嫁のない息子の幸星と二人で暮らしていた。初めは驚いたが、そのうち「しゃーないなあ。」とあきらめ顔で受け入れた。静は辛かった。家の中でもご近所でも、居場所がなかった。家の裏に古い蔵の建物があり、その続きの狭い部屋で過ごした。
大阪へ出ていた息子春光が久しぶりに玉金の家に帰って来た。母親が実家に戻ったと聞いてびっくりした。親父、何でほんなことすんねん、おかん、かわいそうや。わし連れ戻しに行ってくるいうて、翌日レクサスに乗って夢前へ行って、連れて来た。静は申し訳なさそうに、おずおず玄関から入って来た。玉金は一目見て何とも言えず目をそらした。春光が帰ってからも、夫婦はぎくしゃくして、ご飯時でも顔を合わさないようにした。部屋も一階と二階で別々にした。近所の叔母はんたちがまた色々うわさした。おとなしい性格の静は前より出不精になり、鬱屈がたまっていった。ある日、朝も昼も静が二階から降りて来ない。夕方になっても降りて来ない。さすがに玉金は心配になって二階へ上がると、入口の鴨居に帯を固く掛けて、静が首を吊っていた。
息子らにさんざん責められた玉金もこの間死んでしまった。前立腺が元だという。たくさんお金を残して逝った。「夫婦の値打ちは三千万かい」と人々が噂した。

二 リストラ婚

桃田麗子は小豆島の土庄港の近くで生まれた。三人姉妹の真ん中である。親は漁師相手の小さな喫茶店をしていた。後にパブをやり始め、フィリピンの女の子を雇って、そこそこはやっていた。麗子は目鼻が大きく口元が愛らしく活発で、友達に人気があった。美人というよりはよく目立つ顔立ちで、男好きのするタイプである。これが麗子の人生に大いに影響することになる。
中学校では先生に勧められてコーラスに入った。神戸の私立の女子高に進学した。ここでもコーラスをやった。歌が好きだったし、お化粧や服装のおしゃれにも関心があった。大学進学も考えたが、中学時代からの親友が化粧品会社に就職するというので、麗子も同じ会社に入った。神戸のデパートの化粧品売り場に勤めた。男性と付き合ったことはまだなかったが、これがひょんなことからひょんなことになる。ある日仕事が終わる頃、親友の栄光子(さかえみつこ)がデートの約束をしたけれど、急用で行けなくなった、どこそこへ断りに行ってほしいという。今のように携帯もスマホもない時代である。ほかならぬ親友の頼みだから、出かけて行った。そこに男性が待っていた。実はこうこうと訳を伝えると、その男性が「いや実は僕も頼まれて断りにきたんです」という。二人は顔を見合わせて、笑った。歯がきれいだった。背が高く角ばった顔立ちだが、ハンサムである。麗子はこの男性に好感を持った。麗子よりも男の方が熱心だった。麗子の愛らしい顔や姿にすっかり夢中になったようだった。お互いに住所を書いたメモを交換して別れた。しかし、男性からの連絡はなかった。半年も過ぎて、忘れていたころにその男性李朝男(りともお、韓国籍)が職場に尋ねて来た。もらったメモを帰り道で紛失し、必死に探し歩いた。そして、見つけた!うそのような本当の話であった。この熱意に麗子も感激した。李は韓国籍だった。戦前に両親が日本に渡って来て、建築関係の会社を経営していた。李は神戸の海運会社に勤めていた。どちらも職場が神戸で近かったから、仕事が終わると、定期的に会うようになった。一年後に結婚した。すぐ女の子が生まれた。ここまではよかった。しかし、順調な時代は長く続かない。李に女がいるという噂が聞こえてきた。職場に出入りの若い女だという。麗子はまさかと思った。しかし親友の報告やらなにやら重なって、否定できなくなった。かといって夫に釈明を強く迫ることもできないでいた。鬱々といやーな気持ちが続いていた。そんな麗子をまっすぐ見ている男がいた。職場で時々見かける。風采のいい男である。髪をオールバックにし、スーツもネクタイも靴も高級品でまとめてスキがない。物腰は穏やかである。麗子の売り場の向井は男性服売り場で、そこへよく来るから、自然と目が合ったりした。ある日男は麗子に話しかけてきた。男は神野龍造といった。麗子を見たさにここへ来るのだといった。まじめな夫とは違い垢抜けした人だ、と思った。この男に誘われた。話がうまい。遊びをよく知っている。田舎育ちの麗子には刺激があった。何か人の手配をしているとか、そんなことを言った。随分羽振りがいいらしく、いつもおごってくれた。とうとう浮気した。朝男との間は気まずいというより冷え切っていた。疑いようのない女との関係はどうでもよくなった。この人とはいられない。麗子は子どもを連れて、神野のマンションに引っ越した。マンションといってもアパートに毛が生えたようなものだ。神野には定職がなかった。人の手配だプロデュースだとか言っていたが、ヤクザの口利きの下働きのようなものだ。夜に出かけて何日も帰らなかったり、昼間にゴロゴロしていたり、いい格好をするばかりで、何の役にも立たない。麗子が文句を言うと、たたいた。子どものことが心配になった。大げんかして、血だらけになって、また麗子は家を出た。随分お金も取られてしまった。
麗子は垂水の安アパートへ移った。娘は実家の叔母が預かってくれた。両親はパブの経営から不動産まで手を広げていた。

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あとがき

温暖化による災害が日常的に起こるようになっても、苦情を訴えるでもなく、改善を試みる訳でもなく、我慢強い日本人は只々黙しているが、スウェーデンの少女は国連気候行動サミットで各国首脳が気候変動問題について行動を起こしていないと非難した。
日本人は災害について極めて寛容で、福島の原発事故に於いて誰一人刑事責任を取らなくても、「想定外」で赦免し、半減期60年の放射能汚染でさえも許してしまう。この種の寛容と忍耐は、日本の将来にとって明らかに害毒である。
日常の煩雑さに紛れて、気候環境問題を顧みなかった事は我々世代の大きな責任だと思う。我々が去った後に環境に対する負荷を残すのは、未熟な経済システムの結果だとしても、やはり罪ではないのか。
文明は明らかに自然破壊である。破壊する以外に人類の繁栄が無いのだとすれば、自然に対する「寛容と忍耐」ではなく、日本古来の「尊厳と畏怖」を取り戻すべきだと思う。
比較的最近発見された寒蘭の北限地が、奈良県北部に達している事は喜ぶべきか悲しむべきか、何とも複雑な心境だ。

著作権は執筆者各位に帰属します。
転載する場合は、関西寒蘭会事務局までお知らせ下さい。

関西寒蘭会会誌編集部